痔ろう(あな痔)について
痔ろうは肛門腺のあるくぼみに下痢便などの細菌が感染してしまい、炎症が起きることによって、くぼみのある直腸と肛門周辺の皮膚の間に瘻管という道ができて、トンネル状につながってしまっている状態です。肛門周辺の皮膚に穴ができ、そこから膿が出るためあな痔とも呼ばれています。
切れ痔が女性に多い傾向がありますが、下痢が原因で発症する痔ろうは女性よりも男性がなりやすい病気といえます。症状が重くなるとアリの巣状に枝分かれする複雑痔ろうになってしまい、手術が必要になるケースもあります。放置しておくと痔ろう癌につながる可能性も高まります。
肛門の皮膚は、わずかながら肛門の中にまで入りこんでいて、入り込んだ皮膚である肛門皮膚の上には直腸粘膜があり、肛門皮膚と直腸粘膜の境界がデコボコしながら、肛門腺のあるくぼみを形成しているという構造になっています。
痔ろうの症状
まず肛門や臀部から血や膿が出て、下着やズボンが汚れてしまうといった症状が現れます。膿が溜まることによって肛門周囲膿瘍を併発してしまうと発熱があり、腫れてしまいます。そうなると排便時に限らず激痛を伴うのが特徴的です。
痔ろうの治療法
シートン法
シートン法は切開と治癒が同時並行で進められるので、再発のリスクも低減できるという治療方法です。まず瘻管の中に輪ゴムを挿入し、数週間に1度この輪ゴムを絞めこんでいく、増し絞めという処置を行っていきます。さらに数週間経過したところで、更に輪ゴムを増し絞めします。そうすることで瘻管と筋肉はゆっくりと切れていきますが、その間に先に切開した筋肉が癒合し、治癒していくことになります。切開開放の変法です。
くりぬき法
その名の通り、括約筋の中を埋もれて貫通している瘻管を、くりぬいてしまうという治療方法です。筋肉を切開することなく行えるため、筋肉へのダメージが少なく、手術後の便失禁はほとんどありません。ただ手術後は、完全に傷が乾くまでに一定の時間を要してしまいますので、治癒に多少の期間がかかります。手術後、早期に下痢をしてしまうと再発するリスクが高まってしまうため、手術後の排便コントロールがポイントになります。
これらのことから、わずかとは言え手術後に便失禁が引き起こされてしまう点を考慮すると、患者さまの肉体的、あるいは精神的ダメージは比較的大きいと言えるかもしれません。
切開開放
切開開放という方法は、括約筋という筋肉を切開し、瘻管を露出させて取り除くという方法です。根治性は高く、再発率も少ない方法ですが、僅かとは言え、括約筋を切開することで、便失禁を来たす可能性があることは考慮する必要があります。
痔ろうは瘻管という炎症によって道ができてしまった病気で、瘻管は括約筋という筋肉の中に埋もれた状態で存在しています。痔ろうの治療はこの瘻管を切除して、細菌が再び入り込まないようにするということが目的になります。治療方法の違いは瘻管をどのように切除するかの治療です。
痔ろうの手術費用
症状によって手術内容が変わるため、費用には多少の幅がありますが、だいたいの目安をご紹介します。痔ろうの手術は健康保険が適用されます。以下は3割負担の場合の費用例です。
痔ろうの状態 | 手術費用 |
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単純痔ろう | 約20,000円 |
複雑痔ろう | 約30,000円 |