切れ痔について
痔の中でも切れ痔は女性によく見られる傾向があります。便秘になりやすいこととなどが関連していると考えられています。食事量が少ない女性は便の量も少ないため便意を感じにくく、便秘になりやすいのです。便秘になると便が硬くなって、排泄しにくくなります。そうして、排泄しにくい硬い便ができると、それが肛門を通過する際に肛門に無理にかかり、肛門上皮が裂けてしまうのです。
このように肛門の出口付近の皮膚が切れている状態が切れ痔で、裂肛やさけ痔ともいいます。太い便や硬い便のほかにも、下痢で勢いよく便が通過することも原因となって引き起こされることがあり、強い痛みを伴います。歯状線より外側にある肛門上皮は、痛みを感じる知覚神経が通っている皮膚ですので、肛門内部の粘膜とは異なるというのがその理由です。
一度便秘になって便が硬くなり、それが肛門を通る際にまた肛門を傷つけてしまい、強い痛みを感じるようになると、排便が怖くなり便を我慢してしまう傾向にあります。そうして排便時に強い痛みをともなうようになるという状態が慢性化してしまうと、どんどん悪循環に陥ってしまうのです。
また、このような状態が続くと次第に硬くなったキズによって、肛門の広がるはたらきが妨げられてしまいます。そうするとさらに切れやすくなって、強く痛むようになるのです。症状が進行すると最終的には便が通らないほど狭くなってしまうといったケースもあります。
こうした悪循環は切れ痔の悪化サイクルと呼ばれています。
①毎日おふろに入りましょう
おふろに毎日入るのは切れ痔にとって最高の予防法、治療法です。化膿してしまっている場合の入浴は悪化させるので禁物ですが、おしりを温めると血行が良くなり、清潔さも保たれるためです。
② おしりをきれいにしましょう
肛門を汚くしておくと細菌が繁殖してしまいますので、排便の後はきれいにしておきましょう。ウォシュレットなどの使用で水またはお湯で洗うようにするととても効果的です。
③ 便秘をしないようにしましょう
便も固くなって排便時に肛門部を傷つけて、感染を起こしやすくなるのを避けましょう。便秘になると便が腸内にたまって肛門部を圧迫し血行が悪くなります。
④ 下痢をしないようにしましょう
下痢が続くと体力も消耗します。下痢は直腸粘膜や肛門部を化学的に刺激しますので、下痢の原因を探り早めに改善してください。
⑤ 排便はいきまないようにしましょう
肛門部にうっ血や出血を引き起こしますので、排便の時にいきみすぎるのはやめましょう。重い荷物をあげるのも同様です。また、ゴルフも肛門部に急激な負担のかけるため、痔の悪い人は避けるようにしてください。
⑥ おしりを冷やさないように
冬期や汗をかいた時、釣りなどをする時は特に要注意です。おしりを冷やすと肛門部の血行が悪くなりますので、おしりをなるべく冷やさない工夫をしてください。
⑦ 長時間同じ姿勢でいないように
座りっぱなしや立ちっぱなしはなるべく避けて時々軽い体操などして血液の流れをよくするようにしてください。肛門部に充血を生じさせます。
⑧ 長いドライブもさけましょう
⑦と同様に運転を職業としている人は、他の人よりも予防に努めることが大切です。長時間のドライブも肛門部に充血を引き起こして、刺激をします。
⑨ 酒、タバコ、コショウなどの刺激物はさけましょう
肛門部や血管を刺激するタバコの吸い過ぎのほか、アルコール類や香辛料の摂りすぎもひかえめにしましょう。充血や炎症を起こします。
⑩ 正しい診療を受けましょう
痔と似たような症状だとしても、間違った自己治療は禁物です。痔以外の病気の可能性もありますので、気になる点がある場合は、お早めに受診するようにしましょう。また、痔を治すためには恥ずかしがらず、相談や正しい治療を受けることが大切なポイントです。
切れ痔の原因と症状
排便時の痛みと出血が代表的な症状です。痛みは感じない方もいれば、強く痛む方までいます。出血はトイレットペーパーに付く程度から便器が真っ赤に染まるまでさまざまです。切れ痔における問題点は痛みと肛門が狭くなることです。慢性化してキズが治りにくくなってくると、徐々にキズが深くなっていきます。肛門上皮だけでなく、内肛門括約筋まで裂けてしまいます。
すると、この筋肉がけいれんを起こし、痛みが排便後まで持続するようになります。ひどい方では半日続くこともあります。ここから「切れ痔(裂肛)の特徴」の中で説明した悪化サイクルに発展していきます。
急性裂肛
便秘した時や硬い便をした時に引き起こされます。排便時に痛んだり、出血したりするもので、数日で改善することが多いです。
慢性裂肛(初期)
同じ場所が何度も切れてしまうと、キズが深くなって治りにくくなっていきます。キズが潰瘍になってくることで、排便時の痛みが排便後も持続するようになります。
切れ痔の治療法
手術法
側方皮下内括約筋切開術(LSIS)、裂肛切除術、肛門ポリープ切除、用指肛門拡張術
側方皮下内括約筋切開術
広がりにくくなった肛門の括約筋の過緊張状態を改善するため、一部を切開して正常な状態に戻します。用指肛門拡張術とほとんど同じ適応になります。
裂肛切除術、肛門ポリープ切除
すでに慢性遷延化してしまった裂肛を内痔核の手術療法と同じように切除します。同時に肛門ポリープが併存する場合は、その切除も行なっていきます。
用指肛門拡張術
側方皮下内括約筋切開術と同じように、括約筋の緊張が強すぎる場合は、指で肛門を広げていき、括約筋の過緊張を緩め改善させます。過緊張が原因となり肛門が十分に開かず、裂肛の再発を何度も繰り返してしまう場合に、充分な麻酔を施して行われます。
切れ痔の手術費用
健康保険や国民健康保険が適用されますので、3割負担での切れ痔の治療費用をご紹介します。費用は症状などにより変化しますが、目安としてください。
手術内容 | 手術費用 |
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切れ痔の手術 | 約20,000円~約30,000円 |
切れ痔を予防するために
便秘の予防に努めるのが何よりも肝要です。水分をたっぷりと摂るようにして、食物繊維をしっかりと摂取できる食事を心がけましょう。それでも解消されない場合などはお薬を使って便を柔らかくするなどの方法があります。当院でもご相談を承っております。